FXでも株でも、私たち投資家は、合理的な行動ができずによく失敗します。
この合理的でない心理や、そんな心理のワナにはまらないための対策は、人間の行動の不合理さに着目した行動経済学から学ぶことができます。
この記事では、行動経済学の見地から、私たち投資家の悩み解決に必ず役立つ心理効果を13個ご紹介します。
プロスペクト理論(損失回避の法則)
わかりやすく言うと、人間は、「得」よりも「損を回避する方」を選ぶ、「1万円をもらう嬉しさ」よりも「1万円を失う悲しみ」の方が大きいのです。
損切りってなかなかできないですよね。
私たちが上手に損切りできない心理は、「プロスペクト理論」で説明できます。
損切りをすれば、今はまだ含み損にすぎず、逆転の可能性がある(かもしれない)状態だったものが、損失として確定されてしまいます。
なので、損失を生む損切りを前にすると、私たち投資家の心理には「プロスペクト理論」が働き、損切りそのものを回避しようとしてしてしまうのです。

アンカリング効果
語源は、船のアンカー(いかり)です。アンカーを海底におろした船は、その届く範囲でしか動けないことから、「アンカリング効果」と名づけられました。
私たちは「高値掴みの安値売り」をよくしてしまいますが、この心理は、アンカリング効果で説明できます。
例えば、為替市場において、ここ数ヶ月ずっと110円付近にいたドル円相場が100円まで下落したとします。
このとき、110円がアンカーになっている多くの投資家から見ると、今の100円は値ごろ感があり、急いでロングポジションを構えてしまいたくなります。
しかし、この110円が間違った思い込みのアンカーであれば、このまま相場の下落は止まりません。
もしロングポジションを構えてしまっていれば、最終的には「高値掴みの安値売り」になっていたことでしょう。
こうして、私たちは、間違った思い込みのアンカーに影響を受けてしまい、「高値掴みの安値売り」をしてしまうのです。

バンドワゴン効果
私たちは、流行のような大勢の判断に安易に同調してしまいがちですが、この心理は、バンドワゴン効果で説明できます。
例えば、ある通貨ペアが急騰したとします。
それを見ていた為替市場の参加者は、「バンドワゴン効果」によって、大勢の判断だと思ってどんどん新規参入していくことになり、その通貨ペアはさらに急騰します。
さらに「バンドワゴン効果」は続き、それを見ていた他の人々も新規参入し、流行は加速していきます。
しかし、ある程度まで急騰すると、最初から参加していた人々は、すでに十分な利益をあげているので、頃合いを見て撤退していきます。
そして、ある瞬間に暴落が始まり、後から参加した人や逃げ遅れた人は大きな損失をこうむることになってしまうのです。
特に、日本人は協調性を大事にすることから、「バンドワゴン効果」にはまりやすいと言われます。

一貫性の原理
FXで勝ち続けるためには、投資戦略を立てることが重要ですが、その投資戦略を守り続けることも同じくらい重要です。
投資戦略を守り続けるために、人間に無意識に働く心理作用である「一貫性の原理」をうまく活用しましょう。
心の中で決意するだけでは、「一貫性の原理」は強く働かないので、三日坊主になってしまいがちです。
そこで、家族や投資仲間に「投資戦略を守る」ことを宣言するのです。
夫や奥さんからみれば、わが家の財産が増減する話なのですから、その宣言をやり続けているか関心を持っていてくれるでしょう。
投資仲間に対しては、対等な立場の仲間に、いい加減な人と思われたくない、という心理が働くでしょう。
このように、宣言は、あなたの「投資戦略を守る」という決意に「一貫性の原理」を強く働かせます。

サンクコスト効果(コンコルド効果、埋没費用効果)
「サンクコスト効果」の原因は「もったいない」という心理です。
過去の投資を惜しんで「もったいない」と思ってしまう心理が、現在も投資を続けてしまう原因になっているのです。
私たちがナンピンをやってしまう心理は、「サンクコスト効果」で説明できます。
ナンピンは、みんな理屈ではダメだとわかっているのに、「もったいない」「失ったお金を取り戻したい」と思ってしまうために、してしまうのです。
その結果、少しの損失で済んだはずなのに、大きな損失を出してしまうことになるのです。

部分強化
条件づけとは、報酬や罰を与えることにより、ある行動を自分からするように訓練することです。
人間の心理には、報酬を毎回もらえる「連続強化」よりも、時々もらえる「部分強化」を好む傾向があります。たまに大きく勝つギャンブルは当たったときの快感が大きいため、その快感が忘れられずに依存してしまうのです。
「ポジポジ病」とは、ポジションを構えたくて仕方がない、手持ちポジションがない状態を我慢できない、そんな心理状態のことをいいますが、このポジポジ病になる理由は、「部分強化」で説明できます。
FXで、たまにトレードが成功して大きな利益をあげたとすれば、「部分強化」による快感になります。
そして、また快感を味わいたいという心理により、ポジションを構えたくて仕方がない、手持ちポジションがない状態を我慢できなくなってしまうのです。

ギャンブラーの誤謬
相場について、「そろそろ下落するだろう」とか「次こそは勝てるだろう」とか根拠のない思い込みをしてしまうことがよくあります。
私たちは、なぜ合理的な根拠もないのに、勝手な思い込みをしてしまうのでしょう?
このような思い込みをしてしまう心理は、「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」で説明できます。
今、ある通貨ペアが連日上昇し続けている状況にあるとします。
このようなとき、ほとんどの投資家の心理は、無意識に「ギャンブラーの誤謬」におちいり、合理的な根拠がないのに「そろそろ下がるだろう」と思い込むようになります。
この思い込みによって、急いでショートポジションを構えてしまう投資家もいるでしょう。
しかし、相場が下がると判断した理由は、ただの思い込みですから、もしショートポジションを構えていれば、さらに相場が上がって損をするということがあるのです。

確証バイアス
つまり、都合のいい情報だけを集めて、自分の先入観を強化するのです。
私たちは、投資判断にあたり、自分に都合のいい情報ばかり集め、反対意見を無視してしまいがちですが、その理由は「確証バイアス」で説明できます。
今、エントリーしようと思い、情報を集めるとします。
このとき、ここでエントリーすれば勝てると考えているわけですから、その考えを証明する情報ばかりを集めてしまいます。
例えば、たまたま同じ考えのマーケットニュースがあったとか、同じ判断を示すテクニカル指標を探すとか。
結果、片寄った情報で投資判断をするわけですから、正しい判断ができず大損しかねません。

現在バイアス
わかりやすく言えば、「1年後に11万円もらえる」より「今10万円もらえる」に魅力を感じてしまう、そんな心理です。
人間の心理は未来をうまく想像できないので、ハッキリわかる今を優先してしまう傾向があるのです。
例えば、投資資金を貯めようと決心しても、なかなか思うように貯められません。
思うように貯金できない心理は、「現在バイアス」で説明できます。
「現在バイアス」により、決心を先のばしにし、目先の満足を優先させてしまっているのです。
決心の先のばしは、もちろん合理的な判断ではないとわかっているのですが、私たちは目先の利益を優先させてしまうのです。

自己奉仕バイアス
わかりやすく言えば、成功は自分の手柄で、失敗は他人のせいだとする考え方です。
「自己奉仕バイアス」の原因は、主に、自分のプライドを維持したい、他人に好印象を与えたい、そんな心理にあると言われています。
投資で負けたときに反省できない心理には、おそらく「自己奉仕バイアス」が作用しています。
投資では、誰でも、勝つときもあれば負けるときもあります。
大事なのは、負けたときこそ、自分と向き合って負けた原因を突き止め、同じ過ちを繰り返さないよう反省することです。
反省しなければ、経験や知識が蓄積されず、いつまでたっても初心者同然です。

認知的不協和
私たちは、自分の考えと対立するまっとうな意見に直面したとき、その不快感を解消するため、ついその場しのぎに自分を正当化しがちです。
その場しのぎが合理的でないとわかっているはずなのに、なぜしてしまうのでしょう?
その理由は、「認知的不協和」で説明できます。
例えば、自分の相場予想と矛盾するマーケットニュースが出た場合などに、矛盾する2つの認知を抱いたために「認知的不協和」が起こったとします。
このとき、不快感を解消するため、私たちはどちらかを否定しようとするのですが、自分の考えを否定する方は、心理的に負担が大きいのです。
そのため、私たちは、より心理的に負担の少ない方を選び、言い訳しながらマーケットニュースを否定して自分の考えを正当化してしまうのです。

罰への欲求
人間は無意識に、人生には良いことと悪いことがバランスよく起こるものだと認識しているので、良いことばかりが続くと不安を感じるのです。
投資で勝ち続けているとき、不安になり、つい間違った行動をしてしまうことがあります。
このような心理は、「罰への欲求」で説明できます。
勝ち続けると、「罰への欲求」により、大きく負けるのではないかと不安になり、
「保有しているポジションを早々と手放してしまう。」
「エントリーサインが出てもスルーしてしまう。」
といった行動をしてしまうのです。
しかし、その不安に合理的な理由はなく、自ら大きなチャンスを逃しているかもしれないのです。

少数の法則
私たちは、チャート上のわずかなサンプルから無理にパターンを探そうとしがちです。
しかし、サンプル数が少なすぎて、統計学的にも、パターンなどないのにパターンがあると決めつけてしまっている可能性が高く、いつか大損しかねません。
私たちは、どうしてわずかなサンプルだけでパターンがあると思い込んでしまうのでしょう?
その理由は「少数の法則」で説明できます。
目に見える過去のチャートから、たとえ少数でも納得できる事例を見つければ、「少数の法則」により、そのパターンに意味があると信じ込んでしまうのです。

まとめ
以上、行動経済学の見地から、私たち投資家の悩み解決に必ず役立つ心理効果を13個ご紹介しました。
この記事が、あなたの運用成績UPに必ず役立つと確信しています。
いっしょに頑張りましょう!