FXでも株でも、私たち投資家は、合理的な行動ができずによく失敗します。
この合理的でない心理や、そんな心理のワナにはまらないための対策は、人間の行動の不合理さに着目した行動経済学から学ぶことができます。
都合のいい情報と悪い情報
あなたは今、ドル円が近いうちに「あと〇円は上昇する」と予想していて、ロングポジションを構えようと考えているとします。
そんなとき、マーケットニュースで2つの記事を見ました。
記事A「今後 FRBによる大幅な利上げが予想され、景気が冷え込み、ドル円相場はこれ以上の値上がりは見込めないだろう。」
記事B「現在のアメリカの力強い好景気を背景に、ドル円相場は年内いっぱいまで上昇するだろう。」
あなたは、この正反対の2つの記事を見てどう判断しますか?
私なら、自分と同じ予想をしている記事Bを見て安心します。
自分と反対意見である記事Aは、無視してしまうでしょう。
しかし、私のような判断は、投資家として危険な傾向です。
ひょっとしたら、私の予想や記事Bは、一般的ではないレアな予想なのかもしれません。
私が無視した記事Aの方が、実はまっとうな多数意見なのかもしれません。
しかし、そうだとしても、そのことに私は気付くことはできません。
反対意見を無視していますから。
このままだと大損しかねません。
都合のいい情報だけを集める心理~確証バイアス~
私たちは、どうして自分に都合のいい情報ばかり集め、反対意見を無視してしまいがちなのでしょう?
それは、人間は必ずしも合理的に行動できないからです。
その理由は、行動経済学の「確証バイアス」で説明できます。
行動経済学の「確証バイアス」の意味
行動経済学とは、人間が必ずしも合理的に行動しないことに着目し、これまでの経済学では説明できなかった経済行動を心理学的な観察から説明しようとする新しい経済学です。
つまり、自分に都合のいい情報だけを集めて、自分の先入観を強化するのです。
論理パズルの実験
ウェイソンの論理パズルの実験が有名です。
テーブルに4枚のカードが置かれています。
4枚とも、表面にはアルファベットが、裏面には数字が書かれていて、それぞれ「U」「B」「6」「3」の面が表を向いて置かれています。
仮説:表面のアルファベットが母音のカードであれば、裏面の数字は偶数である。
この仮説を検証するため、カードを2枚だけめくっていいとすれば、どの2枚をめくりますか?
正解は「U」と「3」です。
もし「U」の裏面が奇数か、「3」の表面が母音であれば、仮説は偽であることが証明できるからです。
実験では、回答者の多くは「U」と「6」のカードを選びましたが、「U」と「6」の組み合わせでは反証できません。
この実験結果から、多くの人は、仮説を肯定する情報ばかりを集め、反証する情報を集めようとしないことがわかります。
確証バイアスの具体例
血液型性格診断が有名です。
例えば、A型の人は几帳面だと言われます。
その情報を信じている人は、A型の人3人と話をしていて、1人だけが几帳面だったとしても、その1人の几帳面さばかりが目につき「やっぱりそうだ!」と思ってしまいます。
FXと確証バイアス
FXでも確証バイアスはよく見られます。
今、エントリーしようと思って情報を集めるとします。
このとき、ここでエントリーすれば勝てると考えているわけですから、その考えを証明する情報ばかりを集めてしまいます。
例えば、たまたま同じ考えのマーケットニュースがあったとか、同じ判断を示すテクニカル指標を探すとか。
確証バイアスを回避する方法
どうすれば、集める情報の偏りをなくすことができるのでしょうか?
まずは、自分の心理に「確証バイアス」が働いていると自覚することです。
この記事を読んだあなたは、今後、もし 無意識に、自分に都合のいい情報ばかりを集めてしまったとしても、
「これが確証バイアスってやつか~。」
「確かに、否定的な情報を無視してるわ」
と自覚し、自分の心理にブレーキをかけることができるでしょう。
自覚した上で、ポジションを構えようと考えるときに、意識的に自分に都合の悪い情報を探す習慣をつけることです。
上昇すると予想しているときは、意識的に下落する情報を探すのです。
この習慣をつけることで、集める情報の偏りをなくすことができます。
まとめ
「確証バイアス」は、自分の考えや意見を正当化したいために、人間が無意識に、とってしまう行動です。
そこから逃れるためには、まず自分の心理に「確証バイアス」が働いていると自覚することです。自覚すれば、自分の心理にブレーキがかかります。
自覚した上で、ポジションを構えようと考えるときは、意識的に自分に都合の悪い情報を探す習慣をつけることで、情報の偏りをなくすことができます。
このような合理的な行動こそ、FXで安定的に利益をあげ続けるコツなのです。