FXでも株でも、私たち投資家は合理的な行動ができずによく失敗します。
この合理的でない心理やそんな心理のワナにはまらないための対策は、人間の行動の不合理さに着目した行動経済学から学ぶことができます。
「安く買って高く売る」と「高値掴みの安値売り」
高値掴みの安値売り!
あなたもやってしまった経験ありませんか?
私はよくやってしまいます。
チャートを見てちゃんとタイミングを見計らってエントリーしたつもりなのに、約定するや否や、あっという間に反転し、あれよあれよと下落し続けて含み損が膨らんでいきます。
結局、あきらめて損切りすると今度はそこが底値となって反転していく。
まるで、私はFXの神様に嫌われていて意地悪でもされている、そんな気さえしてきます。
FXで勝つためには「安く買って高く売る」ことが必要です。
そのために私たちは、経済ニュース、為替チャートなどから多くの情報を収集し、分析し、予想します。
そして、ここぞと判断したときに、あるときはエントリー注文を出し、またあるときは決済注文を出します。
「高値掴みの安値売り」をしてしまう心理~アンカリング効果~
それなのに私たちは、「安く買って高く売る」の逆の「高値掴みの安値売り」をどうしてもしてしまいます。
一体なぜなのでしょう?
それは、人間は必ずしも合理的に行動できないからです。
私たちが「高値掴みの安値売り」をしてしまう理由は、行動経済学の「アンカリング効果」で説明できます。
行動経済学の「アンカリング効果」の意味
行動経済学とは、人間が必ずしも合理的に行動しないことに着目し、これまでの経済学では説明できなかった経済行動を心理学的な観察から説明しようとする新しい経済学です。
語源は船のアンカー(いかり)です。
アンカーを海底におろした船はその届く範囲でしか動けないことから、「アンカリング効果」と名づけられました。
さまざまな思い込みや勘違いによって思考(判断)が偏ってしまうことを「認知バイアス」と呼びますが、「アンカリング効果」はその一例です。
アンカリング効果は、消費者心理を操作するテクニックとして、マーケティングや営業の現場などでよく使われています。
古本の実験|アンカーとは?
以下は「アンカリング効果」の実証実験です。
一冊の古本を差し出されて、次のように質問されたとします。
「第一印象で判断して、この本は10,000円より高いと思いますか? 安いと思いますか?
それでは、この本の値段はいくらぐらいだと思いますか?」
このときあなたの考えた値段に近いものを選んでください。
A:12,500円
B:7,500円
C:2,500円
あなたの答えは「A」か「B」ではないですか?
なぜなら、最初に「10,000円」が提示されたため、「10,000円」がアンカーとなり、値段を考えるときに10,000円に近い値段を考えやすくなったからです。
なので、もし最初の質問が「この本は1,000円より高いと思いますか? 安いと思いますか?」であったなら、「1,000円」がアンカーとなり、あなたの答えは「1,000円」に近い「C」になったはずです。
つまり、
アンカーが10,000円なら「A」や「B」に、
アンカーが1,000円なら「C」に、
まったく同じ本でも私たちの考えはまったく違う価格水準に導かれてしまうのです。
このように、「アンカリング効果」を上手く使えば、売り手は自分が望んだ値段に買い手の心理を誘導できてしまうのです。恐ろしい話です。
「高値掴みの安値売り」をしてしまう心理
さらに恐ろしい話をします。
もし、アンカーが間違った思い込みの金額だとしたら…
例えば為替市場において、ここ数ヶ月ずっと110円付近にいたドル円相場が100円まで下落したとします。
このとき、110円がアンカーになっている多くの投資家から見ると、今の100円は値ごろ感があり急いでロングポジションを構えてしまいたくなります。
しかし、この110円が間違った思い込みのアンカーであれば、このまま相場の下落は止まりません。
もしロングポジションを構えてしまっていれば、最終的には「高値掴みの安値売り」になっていたことでしょう。
こうして、私たちは、間違った思い込みのアンカーに影響を受けてしまい、「高値掴みの安値売り」をしてしまうのです。
「高値掴みの安値売り」を回避する方法
それでは、「高値掴みの安値売り」を回避するにはどうすればいいのでしょう?
そもそも人間は無意識のうちにアンカーにとらわれてしまうものなので、アンカーを取り外そうと思っても難しいです。
もし取り外せたとしても、すぐ別のアンカーにとらわれてしまうでしょう。
ならば、間違った思い込みによるアンカーではなく、相場状況を正しく反映したアンカーを持てばいいのです。
おすすめの方法があります。
普段使っているチャートとは別に、新たにより時間軸の長いチャートも見るようにします。
例えば、もしあなたが、
普段使っているチャートが5分足なら、普段からより長い30分足や1時間足のチャートも見るようにします。
普段使っているチャートが1時間足なら、普段からより長い4時間足や日足のチャートも見るようにします。
普段使っているチャートが日足なら、普段からより長い週足や月足のチャートも見るようにします。
時間軸の長いチャートは、ブレなどの細かい動きが排除されるので、短いものよりも価格水準やトレンドの方向がわかりやすいです。
なので、時間軸の長いチャートも見ることで、相場状況を正しく反映したアンカーを持つことができます。
まとめ
私たちの目標は「安く買って高く売る」ことです。
それなのに、私たちは無意識に間違った思い込みによるアンカーで判断してしまうため、「高値掴みの安値売り」をしてしまいます。
ならば、時間軸の長いチャートを使って、間違った思い込みによるアンカーではなく、相場状況を正しく反映したアンカーを持ちましょう。
このような合理的な行動こそ、FXで安定的に利益をあげ続けるコツなのです。