FXでも株でも、私たちは、合理的な行動ができずによく失敗します。
この合理的な行動ができない心理や、そうした心理の罠にはまらないための対策は、人間の行動の非合理性に着目した行動経済学から学ぶことができます。
パターンはある?
たとえば、ある通貨ペアが、ローソク足4本分の期間だけ上昇を続け、その後、大きく下落したとします。
しかも、これと同様の動きは、過去のチャートをさかのぼると4つとか5つとか見つけることができました。
このとき、あなたなら、今後は、このパターンに従ってトレードしようと思いますか?
私なら、間違いなくすると思います。
しかし、たかだか4~5つの事例だけで、パターンがあると思い込むのは危険です。
ただの偶然で、パターンなどないのにパターンがあると決めつけてしまっている可能性が高いからです。このままだと、いつか大損しかねません。
少数事例だけで決めつけてしまう心理~少数の法則~
私たちは、どうして少数のサンプルだけでパターンがあると思い込んでしまうのでしょう?
それは、人間は必ずしも合理的に行動できないからです。
その理由は、行動経済学の「少数の法則」で説明できます。
行動経済学の「少数の法則」の意味
行動経済学とは、人間が必ずしも合理的に行動しないことに着目し、これまでの経済学では説明できなかった経済行動を心理学的な観察から説明しようとする新しい経済学です。
統計学には「大数の法則」という基本的な考え方があります。サンプル数があればあるほど、得られる統計的な確率は、理論上の確率に近づくという法則です。
1971年にダニエル・カーネマンが、この統計学の「大数の法則」をなぞらえて「少数の法則」を提唱しました。
たとえば、コイン投げを5回やって、表が4回、裏が1回出たときに、「このコインには表が出やすい特性がある」と思い込んでしまう心理です。
しかし、コイン投げで表が出るか裏が出るかの確率は、理論上は常に5割です。
統計データには、サンプル数が少なければ少ないほど、偏った値をとりやすくなる性質があるので、「少数の法則」によって、私たちは間違った結果を信じてしまう可能性が高いのです。
少数の法則が成り立つ原因
少数の法則が成り立つ原因は2つあると言われています。
第一に、人間の心理は、目に見える情報だけを注目してしまい、目に見えない情報まで考えようとしない傾向があることです。
第二に、人間には、何でも原因を知りたがる傾向があることです。
例えば、「20人の学生に30日間早起きさせた結果、定期テストの点数が平均5%上昇した」という調査結果があるとします。
このとき、私たちの心理は、第一の原因により、目の前の調査結果「早起きした学生はテストの点が上がった」という情報だけを注目してしまい、サンプル数が少なく調査の信頼性が乏しい、とまで考えようとしません。
そして、私たちは、 第二の原因により、「テストの点が上がった」原因は、「早起きに頭が良くなる効果がある」からだと考えてしまいます。それなりに正しそうな原因さえ見つけられれば、合理性がなくても納得してしまいます。
このように、これら2つの原因により、人間の心理は「少数の法則」にとらわれてしまうのです。
FXで見られる少数の法則
冒頭の例で言えば、目に見える過去のチャートから、たとえ少数でも納得できる事例を探し出し、そのパターンに意味があると信じ込んでいるのです。
しかし、サンプル数が少なすぎて、統計学的にも、パターンなどないのにパターンがあると決めつけてしまっている可能性が高く、いつか大損しかねません。
少数の法則を回避する方法
「少数の法則」を回避するには、どうすればいいのでしょう?
まずは、自分の心理に「少数の法則」が働いていると自覚することです。
この記事を読んだあなたは、今後、もし少数のサンプルから得られたパターンに意味があると信じ込みそうになったとき、
「これが少数の法則ってやつか~。」
と自覚し、自分の心理にブレーキをかけることができるでしょう。
自覚した上で、そのパターンに意味があるかどうか、十分なサンプル数を集めて検証するのです。
この場合、メタトレーダー4(MT4)のチャート機能やバックテスト機能が便利です。
MT4は、無料で使える高機能なチャートソフトです。
デフォルトで50種類以上のテクニカル指標を装備しています。
しかも、EA(自動売買に必要なプログラム)を組み入れることで、売買ルールの優位性をバックテストで検証することができ、さらにそのルールに基づいてシステムトレード(自動売買)を行うこともできます。
まとめ
私たちの心理には、無意識のうちに「少数の法則」が働き、選び抜いた少数のサンプルから得たパターンに意味があると信じ込みがちです。
回避するには、まずは自分の心理に「少数の法則」が働いていると自覚することです。
自覚すれば、自分の心理にブレーキがかかります。
その上で、メタトレーダー4(MT4)を使って、そのパターンに意味があるかどうか、十分なサンプル数を集めて検証しましょう。
これこそが、FXで安定的に利益をあげ続けるコツなのです。