初心者向けに、MQL4言語を使ったプログラミングについて解説しています。
今回は、MT4のサンプルEA「MACD Sample.mq4」のソースコードの一部を書き換えて「ATRストップ」を実装します。
仕組みさえわかれば、あなたの自作EAにも簡単に実装できます。
ぜひあなたの勝てるEA作りに役立ててください。
ATRストップとは
ATR(Average True Range)とは、平均的な1日の値幅のことです。
自分が取引する通貨ペアの変動率(ボラティリティ)を知っていれば、トレードをする上でさまざまな判断に役立ちます。
例えば、トレンドが変わったのか、それとも単なる価格のブレなのかの判断など。
システムトレーダーのバイブル『魔術師たちの心理学―トレードで生計を立てる秘訣と心構え』でも、ATRを使ったストップロスの設定が推奨されています。
ATRストップとは、トレーリングストップのトレール幅をATRで算出する投資手法です。
MetaEditor の起動
サンプルコード「MACD Sample.mq4」に実装されているトレーリングストップの一部を書き換えて、ATRストップのソースコードを作ります。
MT4の「メタクォーツ言語エディタ」をクリックします。
MeTaEditorが立ち上がったら、画面左側の「Navigater」内のツリーから「Experts」をダブルクリックします。
「Experts」のツリーから「MACD Sample.mq4」をダブルクリックすると、ソースコードが開きます。
ATRストップの自作
それでは、いよいよソースコードを書き換えていきます。
外部パラメーターの変更
カーソルを11行目に移動します。
ここでは、ユーザーが変更可能なパラメーターを設定しています。
【変更前】
input double TakeProfit =50;
input double Lots =0.1;
input double TrailingStop =30;
input double MACDOpenLevel =3;
input double MACDCloseLevel=2;
input int MATrendPeriod =26;
【変更後】
input double TakeProfit =50;
input double Lots =0.1;
input double MACDOpenLevel =3;
input double MACDCloseLevel=2;
input int MATrendPeriod =26;
input int ATRperiod = 14;
input double ATRtimes = 3;
サンプルコードのトレーリングストップでは、パラメーター「TrailingStop」を設定し、トレール幅は自分で決めていました。
ATRストップでは、トレール幅が1日の平均値幅であるため、変動していきます。
そのため、値幅の平均をとる期間(ATRperiod)とATRを何倍にするか(ATRtimes)を、パラメーターとして設定し、トレール幅は内部関数で計算します。
テクニカルインジケーター変数の宣言の追加
カーソルを下に移動させます。
ここでは、テクニカルインジケーター変数の宣言を記述しています。
double MacdCurrent,MacdPrevious;
double SignalCurrent,SignalPrevious;
double MaCurrent,MaPrevious;
int cnt,ticket,total;
double TrailingStop;
ATRの計算結果を入れる変数として「TrailingStop」を宣言しました。
テクニカルインジケーター関数の追加
カーソルを下に移動させます。
ここでは、テクニカルインジケーターを計算し、各変数に代入しています。
//--- to simplify the coding and speed up access data are put into internal variables
MacdCurrent=iMACD(NULL,0,12,26,9,PRICE_CLOSE,MODE_MAIN,0);
MacdPrevious=iMACD(NULL,0,12,26,9,PRICE_CLOSE,MODE_MAIN,1);
SignalCurrent=iMACD(NULL,0,12,26,9,PRICE_CLOSE,MODE_SIGNAL,0);
SignalPrevious=iMACD(NULL,0,12,26,9,PRICE_CLOSE,MODE_SIGNAL,1);
MaCurrent=iMA(NULL,0,MATrendPeriod,0,MODE_EMA,PRICE_CLOSE,0);
MaPrevious=iMA(NULL,0,MATrendPeriod,0,MODE_EMA,PRICE_CLOSE,1);
TrailingStop = NormalizeDouble(iATR(NULL,0,ATRperiod,1)*ATRtimes,Digits);
ATRインジケーターの式を追記し、トレール幅を算出しました。
iATR()は、ATRインジケータを計算する関数で、その値を返します。
ここでのiATR関数のカッコ内の数字や記号の意味は以下のとおりです。
iATR(通貨ペアは無指定,現在の時間軸,平均期間は「14」,1本前のバーの値を取得);
NormalizeDouble関数は、指定された精度で丸められた浮動小数点数を返します。ここでは、Digits()を用いて正規化された桁数を取得しました。
買いポジションのトレーリングストップ発動条件
カーソルを下に移動させます。
ここでは、買いポジションのトレーリングストップの発動条件が記述されています。
//--- check for trailing stop if(TrailingStop>0) { if(Bid-OrderOpenPrice()>Point*TrailingStop) { if(OrderStopLoss()<Bid-Point*TrailingStop) {
不要になった「Point*」を削除しました。
ストップロスオーダーの表記の変更
カーソルを下に移動させます。
ここでは、買いポジションのオーダー変更の命令が記述されています。
//--- modify order and exit
if(!OrderModify(OrderTicket(),OrderOpenPrice(),Bid-Point*TrailingStop,OrderTakeProfit(),0,Green))
Print("OrderModify error ",GetLastError());
return;
不要になった「Point*」を削除しました。
売りポジションのトレーリングストップ発動条件
カーソルを下に移動させます。
ここでは、売りポジションのトレーリングストップの発動条件が記述されています。
//--- check for trailing stop if(TrailingStop>0) { if((OrderOpenPrice()-Ask)>(Point*TrailingStop)) { if((OrderStopLoss()>(Ask+Point*TrailingStop)) || (OrderStopLoss()==0)) {
不要になった「Point*」を削除しました。
ストップロスオーダーの変更
カーソルを下に移動させます。
ここでは、売りポジションのオーダー変更の命令が記述されています。
//--- modify order and exit
if(!OrderModify(OrderTicket(),OrderOpenPrice(),Ask+Point*TrailingStop,OrderTakeProfit(),0,Red))
Print("OrderModify error ",GetLastError());
return;
不要になった「Point*」を削除しました。
ソースコードの書き換えは以上です。
まとめ
MQL4言語入門として、MT4のサンプルEA「MACD Sample.mq4」のソースコードの一部を書き換えて「ATRストップ」を実装しました。
仕組みさえわかれば、あなたの自作EAに簡単に実装できます。
ぜひあなたの勝てるEA作りに役立ててください。